舞台美術『劇団 江戸間十畳本公演Vol.8 [煙が目にしみる]』
2度めの舞台美術を担当させていただきました。
前回の反省点を踏まえて臨んだ今回の舞台、全14ステージのあいだ事故や破損もなくお客様方からもご好評いただき大変ありがたく思っています。
【全体】
今回の脚本は『煙が目にしみる』お葬式を舞台にしたコメディです。 他団体による上演では全体にしっとりとした空気の流れる感動作となっているものが多いかと思いますが、江戸間十畳ではコントラストの効いた演出で喜怒哀楽のジェットコースター的な泣いて笑って大忙しの作品に仕上がりました。 舞台美術もトリッキーな使い方を想定してシンプルかつ変幻自在なものを作りました。
開演前の状態では、舞台中央に組まれた平台の奥に窓から見える風景を書割りと仕込み照明で奥行きをもたせた設え。 その窓の両側には柱や壁の装飾に見えるオブジェクトが配置されています。 舞台奥の壁面と窓にはプロジェクションによって場面ごとの効果が加えられます。
セットが動き出すのは主役の2人が火葬の準備を整えたあと。 柱に見立てた木製のフレーム裏に2人が隠れ、表に向き直ると柱は棺へと認識を変化させます。 フレーム内側に貼られた上質紙に描かれた2人の等身大の絵が表れ、虚ろな表情でフレームから出てくる2人とその場に残される絵の対比が幽体離脱の表現となるわけです。 火葬のシーンでは舞台奥に燃え上がる炎が映し出され、骨上げのシーンになると窓の両脇に掛けられたトレイがお骨の描かれた面を表に向け、遺族による骨上げが行われます。 お骨は主役二人のキャラクターを投影したディフォルメが加味されたコミカルなものとなっていて、パズルのように数カ所の骨を取り外せる作りとなっています。
今回、棺の中の人物とお骨の姿は当初写真を元にしたグラフィックデータをプリントする形を想定していたんですが、打ち合わせを重ねてイラストのほうが存在感と面白みがうまく表現できると判断し、ともに手描きのイラストとしました。 上記の説明の他にも演出上それぞれのシーンで細かなギミックが用意されているのですが、文章では伝えにくいため割愛させていただきます。 実際の上演中の様子は江戸間十畳ウェブサイト公式『煙が目にしみる』舞台写真のページでご覧いただけます。
【スケッチ】
今回の舞台美術のために描いたスケッチを掲載します。
舞台美術 劇団江戸間十畳本公演Vol.8 公演情報ページ
公式舞台写真:『煙が目にしみる』
作品形態:舞台美術一式
舞台寸法:幅約7m 奥行き約4.3m
制作時期:2016年10月下旬~12月01日(打合せ期間含む)
クライアント:劇団 江戸間十畳 ウェブサイト
会場:宮益坂十間スタジオ ウェブサイト